Little AngelPretty devil 〜ルイヒル年の差パラレル

    “師走もお元気!”
 

表参道のイルミネーションが11年振りに復活という、
不景気な中にささやかな灯をともすよな、
そんなニュースが取り沙汰されたその翌日。

 「やっと十二月かよ。」
 「やっと? もう、じゃねぇのか?」

今年も残念ながら、
大学一部リーグの頂上決戦“クラッシュボウル”には縁のなかった、
フリル・ド・リザードの皆さんが、
それでも体を鈍
(なま)らすことなかれと、
特に強制しちゃあないのに、三々五々と集まりつつあるグラウンドの一角で、
こちらさんは学校が…まだ短縮にはなってないんじゃあという、
小学生高学年になりましたの金髪坊やが、
主将殿と共にクラブハウス、もとえ、部室から出て来たところ。

 「だってさ、冬休みまでまだまだあんのがなぁ。」

運動会も学芸会も終わって、後はクリスマスまで何にもないのが、
こちらの坊やには、
少々間延びした時期という印象となってしまうのだろう。
クラッシュボウル自体は観に行くので、
秋といえばのアメフト三昧は微妙に継続中で。
別に行楽に出掛けたい訳でもないのに、
なのに…今年も何だか長っ尻な秋という感じがするなぁと思ったのは、
紅葉巡りとか、ライトアップ中継とかいうの、
晩のニュースであんまり見受けなかったからでもあって。
それを言ったら父ちゃんが、

 『そりゃあ、あれだ、
  そういうネタは何にも話題がないときに使うもんだからな。』

その点、今年は政権交代って大きいことがあったわ、
社会ネタでも結婚詐欺女の周辺で奇怪な死とか、
射撃場での火事とか焼鳥屋の火事とか、
火事といや放火も絶えなきゃ、凶悪事件が後を絶たずに起きまくりだわ、
ドバイショックで円高ドル安と、
流すニュースには事欠かぬ秋だったからな。

 『それでなくとも、
  時々は冷えたが、平均とれば今年も暖かい秋だったから。』

 坊;その割にゃ、ヒート何とかっていう機能下着がはやってんじゃんか、
   しかも安売り戦争。
 父;ああそうだってな。
   シマ○ラじゃあ デニムのパンツまで揃うらしいし。
 坊;でもレッグウォーマーも流行ってるらしいぞ、
   レギンスはいてる足元が寒いからかねぇ。
 父;高校でルーズソックス履いてたクチだろから、違和感ねぇんじゃね?
 坊;ちなみに、今時の高校生はニーハイ派だ。
 父;にーはい? 何だそりゃ。
 坊;ブブー、ついて来れなかったから俺の勝ち!

 ……というのが昨夜の会話だったと、挙げてくれた坊ちゃんへ、

 「…さすがというか、いろいろ詳しいんだな、あの人。」

この妖一坊やをそのまんま大人にしたような、
どこか美麗な風貌のお父様のことは、葉柱もよっく知っており。
見栄えはさぞかし嫋やかにも麗しいのだろに、
ニュース・ステーションとか観ながら、そういう会話を交わしている、
金髪コンビの父と息子の図…をふと想像したらしい主将殿へ、

 「おうさ。
  バイト先の喫茶店でワイドショー観たおしとるからな。」

特に狙ったわけじゃあないが、
知的なのに精悍な壮年のマスターの渋さに、
ソフトで優しい雰囲気のウェイターのお兄さんという、
意味深で謎めきの(?)たった二人で切り盛りしていたところへと。
こちらの坊やのお父上、
ちょっぴり酷薄そうな印象もなくはないほどの、
クールビューティなお兄様まで加わった、
昨年からの新規ラインナップが、
真横を通るバスの沿線に居並ぶ高校や大学の女生徒たちを、
とんでもない威力で惹きつけまくっての、今や大繁盛っぷりだそうで。
バタバタと忙しないモーニングの後、
午後の下校時間までの僅かな休憩時間のお供が、
ついつい観てしまう民放のワイドショーなんだそうな。

 “…ますます違和感が。”

ですよねぇ。
スリムな腰へと巻いていた、
カフェエプロンだの、ギャルソン仕様の長エプロンだの外しつつ、
カウンターに頬杖ついて、午後の休憩のお茶飲みながら、
ミヤネ屋とかワイドショー観ている、綺麗どころたちの図。
……おばちゃんも混ざりたいもんです、はい。
(こらこら)

 「時事ネタといや、
  お前んトコは学級閉鎖とか まだないのか?」

新型インフルエンザのみならず、季節性のインフルも流行し始める頃合い。
いくら口が達者で行動力も大人顔負けとはいえ、
ご本人はまだ小学生の妖一坊やなので、
当人は無事でも、
籍を置いてるクラスが風邪で学級閉鎖になった話はこれまでにも結構あった。
まだまださほどの重装備じゃあないけれど、
それでも風は冷たいからとお母様が着せたのか。
フードつきの裾の長いジャケットを羽織った坊や、
そのジャケットをするりと脱いだは、
話相手のお兄さんが、ここまで着て出て来たフィールドコートを脱いだからで。
それを受け取り、当然顔で小さな肩へと羽織りつつ、

 「ウチは今んとこ無事だぞ。
  先週、新型の方の予防接種もあったしな。」
 「あ……。」

今年はセナも泣かなかったから偉いもんだと、
金茶の双眸がえっへんという笑みにたわめられ、
大きめのコートと相俟って、何とも愛らしい風貌に収まる。
予防接種したからと言って、
絶対に罹患
(かから)ないという鉄板なまでの保証はないそうだけれども、

 「……そか、お前小学生だったんだな。」
 「何だよそれ。中学生も十一月から接種対象だぞ?」

背丈が伸びたんで、もう中学生だとでも思っていたかと、
確かにまま、抱き上げたほうが会話しやすかった大昔に比べれば、
随分と大きくなった坊やのそんなお言いようへ、

 「いや、俺らはまだまだ後回しのクチだから。」

ともすりゃ、早いめの春休みに突入してる頃にやっと、
新型接種の順番が来そうな年齢層の大学生の皆々様なので。
自分らには縁のない話だよなと、とうに弾いて意識の外へ、
うっちゃってあった話題であり。

 「そっかぁ、お前小学生だったんだ。」
 「しつこいなっ。」

痛ぇな、いちいち蹴るな。
しつこいからだっ。
普通は子供って大きく見られっと喜ばね?
俺はそこらのガキと一緒じゃねぇんだよ。
まあ、それは言えてるが…。

 「………。」
 「…何だよ。」

つーんっとそっぽを向いてたお顔。
それを何とも言葉を発せぬままに、葉柱が眺めておれば。
視線が気になったか、それとも沈黙が苦手か、
口許とがらせつつもこっちへと向き直るので、

 「なに、そういうカッコしてっと、
  1年のころと大差ねぇなとおもってな。」
 「な…っ!////////」

当時からも、葉柱が着ていたコートじゃ上着じゃを、
面白がって羽織ってた。
温かいには違いなかろが、袖も裾も余り倒していたろうに、
日頃いっぱしに決まったいで立ちをする子が、
なんでそんな不格好なものを着たがるのかと、
いまだに理解が追いつかないらしい葉柱らしいのへ、

 「う〜〜〜。//////」
 「どした?」

それって何年前の話だよっ。
4年くらい前、だろ?
そんな大昔の話、持ち出してんじゃねぇよっ!///////

 「…凄いねぇ、4年が“大昔”なんだと。」
 「いやまあ、あの坊主はまだ9つかそこらだ…ですし。」

俺らにしたって高一の頃っつったら“昔”って感覚になりますしと、
ぎりぎりで十代の学生さんたちは、ほぼ同感でおいでならしいけど。
そんな世代のラインマン、井上くんのお言葉へ、

 “俺らの世代だと、
  レッグウォーマーといや『フラッシュダンス』が出てくんだがな。”

一体どこから聞いていたやら。
…ってちょっと待ってくださいな。
そこまで年寄りじゃあないはずですよの、
痛くない歯医者のお兄様が、
坊やへの冬の検診を通知しにと、
お運びくださってた、初冬の賊大グラウンド一景でございまし。
しみじみとよく晴れた青空に、
木の番にと残された柿の実の橙が、そりゃあ映えてた昼下がり。
どうか余計な嵐だけは起こさんでくださいましよ? 阿含さん。





    〜Fine〜  09.12.01.


  *ほぼ丸々一カ月振りの“年の差”ですね。
   だからってこともないのですが、
   時事ネタばっかですいません。
(苦笑)
   こちらの阿含さんも冬眠はしないらしい…じゃなくって。
   いやもう、ただただお元気なお二人なので、
   さして変わりなくお過ごしかと。……苦しい?
   でもって、今年も穏やかに迎えた12月ですが、
   どんな暖かい冬でも、
   クリスマス前にドーンと冷え込むので、皆様ご用心を。

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